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波乱の船出:コロナ感染と共に

Aakashプロジェクトは2020年4月1日にプロジェクトとして正式にスタートしたが、その船出はCovod-19感染拡大のために極めて厳しいものとなった。インド国との往来は閉ざされ、いつまでこの状況が続くのか先が見えない。しかし、一方で、我々のプロジェクトが人類の歴史的転換点に立ち会っていることの意味をしっかり見極めなければならない。

Mission DELHISの立ち上げ

このプロジェクトは2018年4月から準備研究(IS)としてスタートし、2年間の助走期間を経て現在に至っている。正式なプロジェクトのスタートはこの4月だとはいえ、すでに多くのメンバーが参画し、お互いのコミュニケーションも深まっている。

4月以降、特にワーキンググループ2(WG2)の動きは素早かった。3月25日にインドがロックダウンされてから、これまで大気汚染の酷かった都市の上空に青い空が広がったことは、多くのニュースで報道された(Newsletter #1に述べられている)。ロックダウンの前後で大気汚染物質の濃度の違いを比較すれば、人間活動からの汚染物質放出量を推定できるのではないか。WG2ではmission DELHIS (Detection of Emission Change: Human Impact Studies)を立ち上げ、1ヶ月の間に4回のオンライン会議を開催した。日印両国からほとんどのメンバーが毎回参加してくれたことは、私を大いに勇気づけた。このプロジェクトは必ず成功する。その確信は確固たるものとなった。活動の一端はNewsletter #2で報告している通りである。

人々の意識や行動は変容したか

人間活動の影響が止まったことで、空気がきれいになった。当然といえばそれまでだが、これほどの変化を体感したことは、住民達の意識を変容させるに十分であっただろう。

Covid-19の感染拡大はもちろん人々の健康への意識を大きく変えた。これまでデリーを何度も訪問し、11月初旬のとんでもない大気汚染を体感してきたが、マスクをして歩いている人はほとんどみかけなかった。交通整理をしている警官が黒いマスクをしていたり、バイクに乗っている人がマフラーを口元に巻いてはいたが、日本のように白いマスクをつけて行き来している人はほとんど見かけなかった。ところが、その様子は様変わりを始めている。肺炎になることの恐怖は、当然のことながら呼吸器系の疾患への関心に繋がる。人々がこれまでにもまして呼吸器系の健康に関心を持つようになったことは確実であろう。

このプロジェクトを提案した際、評価者からいろいろ批判的なコメントもいただいた。人々の行動はそんなに簡単に変容しない。大気汚染が酷くなるから、健康に有害だからというだけで、農家の人たちが藁焼きを止めるなんてことはない、等である。しかし、我々のプロジェクトが始まる前に、人々は別の意味ですっかりその行動を変容させてしまった。人々はいとも簡単に行動を変容させるのだ!

だからこそ、デリーの住民の意識と行動の変容をすぐにも調査したい。公衆衛生の専門家チームであるワーキング3(WG3)から、すぐにもデリーで健康意識調査をしたいという希望がでている。ここは、しょんぼりしている場合ではない。すぐにも行動しなければ。そう、行動を変容させなければならないのは、私自身だ。せっかくのプロジェクトのスタートが思いもかけない事態に見舞われてしまったけれど、閉じこもってしょんぼりしている場合じゃない。インドには仲間達が大勢いる。彼らに現地の調査を任せて、日本では私たちのできることをやっていこう。大波に直面したプロジェクトの船出だったけれど、ウィズコロナの時代を覚悟して、この大波に乗り込んでいくしかない。

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ABOUT ME
林田 佐智子
Aakashプロジェクト プロジェクトリーダー | 総合地球環境学研究所 教授 | 奈良女子大学 研究院自然科学系 教授