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農家が藁焼きを辞めるインセンティブとしての価格について

 パンジャーブ州、ハリアーナー州における藁焼きを農家に辞めてもらうための金銭的インセンティブはどの程度か、Pant (2013)1)はネパールの農村で、稲藁を焼かずにコンポスト化するためには農家がどの程度の補償金を要求するかを研究した。その結果は、中央値で1ヘクタール(ha)あたり78米ドル(USD)であった。これに対し、2020年11月に最高裁(Supreme Court: SC)がパンジャーブ州・ハリアーナー州政府に農民に支払うように裁定した金額は100 Rs./quintal*であり、現地で確認したところでは200 Rs./acre**であった。さらにハリアーナー州では1000Rs./acreを支払ったとの報道があった。これらの金額を2020年の為替レートを元に換算すると表1の右端のカラムのようになる。SCの判断は7.4USDに、ハリヤーナー州の措置でも37USDに相当し、Pant(2013)の結果には及ばない。Pantの研究では藁を焼かないだけでなく、コンポスト化することを要求しているため、やや農民の要求額が高めに出ている可能性がある。2019年、パンジャーブ州ルディアーナ県のLatala村を訪問した際に聞き取ったところでは、概ねこのあたりの農家は200Rs./acreもらえれば藁を焼かないだろうと言うことであった。

 一方、藁焼きを止めるために毎年補償金を支払うのは持続可能な方策といえないとする考えが主流であり2)、2018年から政府はHappy Seederなどの導入に補助金を出す方策をとっている。しかし、2020年には、藁焼きが2019年以上に増加し、農民の反発も止まらなかったことからSCが補償金を出すことを勧めたと思われるが、すでに多くの藁焼きが終わってしまう11月になってからの措置であったので、実効性は少なかったと思われる。

 プロジェクトでは現地のアンケート調査を行っており、関連する情報がアンケート結果から得られると期待される。

*quintal(キンタル)は100 kg , **acre(エーカー)はヤード・ポンド法の面積の単位で4046.856 4224 m2に相当

表1

引用文献

1) Pant, K. P. (2013). Monetary Incentives to Reduce Open-Field Rice-Straw Burning in the Plains of Nepal, the South Asian Network for Development and Environmental Economics (SANDEE).

2) AISLING IRWIN, Black carbon: tackling crop-residue burning in South Asia, http://www.igbp.net/news/features/features/blackcarbontacklingcropresidueburninginsouthasia.5.950c2fa1495db7081e3ac.html

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ABOUT ME
林田 佐智子
Aakashプロジェクト プロジェクトリーダー | 総合地球環境学研究所 教授 | 奈良女子大学 研究院自然科学系 教授