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国際会議「冬季のデリーと北インドの大気汚染原因と対策」に参加して

 デリー大学の77ある構成大学の一つであるバスカラチャリヤ・カレッジ応用科学校(Bhaskaracharya College of Applied Sciences) において、10月6日標題の会議が開催され、キーノートスピーカーとして私(林田)が招待された(プログラムはこちら)。この大学は1995年に設立され、著名な天文学者であり数学者でもあるBhaskaracharyaから名前を取っている。会議の前に、この大学の学長でデリー大学全体の副学長を兼任されているBalram Pani教授の部屋に関係者が集まってお茶を頂いた。学部長のAvnees Mittal教授も同席され、大歓迎していただいた。(写真1、地元の新聞で取り上げられた記事はこちら

写真1

 この会議は、デリー大学の別の構成大学Rajdhani大学の教授で、Aakashプロジェクトの提案時からのメンバーであるDhaka教授を中心として企画されたものである。これから始まるデリーの本格的な大気汚染シーズンを前に、大気汚染に対する意識を高めようとする意図が感じられた。

 10時から会議が始まると、100名ほどの学生と教職員がマスクなしでひしめくように大講義室に集まっていた。今でもマスクをして距離を置いてしか集まれない日本との落差に当初は戸惑ったが、インドの人々は、コロナ禍はすっかり過ぎ去ったと認識しているようだ。会議の始めに、お決まりの儀式として学問の神であるサラスヴァティーの像に蝋燭を灯してお祈りを唱えた(プログラムにはLighting of lamp and Saraswati poojaとある)。Pani教授、Mittal教授、Dhaka教授他からの歓迎挨拶の後、来賓挨拶としてインド環境省のAbhinav Kumar氏に続き、日本大使館の一等書記官で環境省から出向中の永井弥穂子氏から挨拶があった。

写真2

その後、最初のセッションで、私が45分間のキーノートレクチャーを行った(写真2)。冒頭に「なぜ日本人がインドの大気汚染が研究しているかと思うかもしれませんが、答えは簡単です。私達は一つの惑星の上に住んでいるからです」と切り出したところ、大きな拍手を頂き、大変うれしかった。心が通じたと感じた瞬間であった。

その後はAakashのこれまでの研究成果の紹介を行った。最後に、今年9月から取り組んでいる集中観測キャンペーンのことについて説明した。このキャンペーンでは、三十数台の観測機器をパンジャーブ州からデリー首都地区に展開し、デリーにおける大気汚染に対する稲藁焼きの影響を定量的に評価するための集中観測を実施する。Newsletter 6号に詳しく述べられているので参照していただきたい。現地での観測については、Dhaka教授を始め、現地のメンバーに多大な協力を仰いでいるので、今回の訪問で感謝の意を伝えられたことは良かったと思う。会議後は昼食が振る舞われ、ロビーの一角で立食を楽しんだ。

会議の翌日は、大使館を訪問し、永井書記官と懇談した(写真3)。大使館内ではマスク着用、離れての着席、飲食厳禁のためお茶のもてなしすら受けられず、前日の会議とはまるで違って別世界であった。同行したダッカ教授も、いかに日本がコロナ感染予防に厳しいか、ようやくわかってくださったようであった。

写真3

 翌々日は、集中観測キャンペーンの定例会議を宿泊中のホテルからzoomで開催した。まだ藁焼きは始まったばかりで、10月中旬から本格的なシーズンを迎える。これから観測機器の維持、観測値のモニタリング、合わせてシミュレーションチームとの連携、と緊張の一ヶ月が始まる。9日にはデリーを慌ただしく後にして、10日帰国、11日から12日にかけて地球研で関係者のミーティングを行った。この後の経緯については、次のブログで紹介したい。

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ABOUT ME
林田 佐智子
Aakashプロジェクト プロジェクトリーダー | 総合地球環境学研究所 教授 | 奈良女子大学 研究院自然科学系 教授