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パンデミックの裏にある環境破壊

霊長類学者のジェーン・グドール博士は、「われわれが自然を無視し、地球を共有すべき動物たちを軽視した結果、パンデミックが発生した。」と述べている(1)。彼女の主張をまとめると、
1. 森林破壊による動物と人との接触機会の増大
2. 野生動物の肉を食することによる伝染機会の増大
であるが、同様の論説は生態学者などから多く出されている (2)(3)。

 一方、大気汚染の酷い地域(ここでは二酸化窒素の濃度で判断している)では、COVID-19感染者のうち、重症化する割合が高いという研究報告が出されている(4)。ヨーロッパではイタリアでCODIV-19による多数の死者がでているが(7月5日現在34,681人:John Hopkins 大発表)、大気汚染の酷いミラノでは、コロナに感染した場合に死亡する確率が他州に比べて2倍の高さだと指摘されている。調査した4443の死亡例のうち、78%が大気汚染の酷い地域で起こっていた。また、米ハーバード公衆衛生大学院(HSPH)の研究チーム は、アメリカの感染者の致死率とPM2.5の間に相関があることを発表している(5)。

 いずれの場合においても、COVID-19パンデミックの背後には、人間がこれまで行ってきた数々の環境破壊・環境汚染がある。地球研として、COVID-19パンデミックに影響したと考えられる環境要因を分析することが重要である。生態学者、大気科学者、さらに公衆衛生の専門家がそろっている地球研で取り組むことが期待される。

引用文献

(1)コロナパンデミックの原因は「動物の軽視」 霊長類学者グドール氏
2020年4月12日 14:25 AFP BBニュース報道

霊長類学者のジェーン・グドール博士は、電話インタビューに答え「われわれが自然を無視し、地球を共有すべき動物たちを軽視した結果、パンデミックが発生した。」と述べた。

「森林破壊によって様々な動物間の距離が狭まり、また病気をうつされた動物が人間と密接に接触するようになり、人間に伝染する可能性が高まる。」

「動物たちは、食用として狩られ、アフリカの市場やアジア地域、特に中国にある野生動物の食肉市場で売られる。こうした環境で、ウイルスが種の壁を越えて動物から人間に伝染する機会が生まれるのだ。」

(2)「パンデミック頻発の裏に環境破壊、新型コロナ終息には1年以上」
山本・長崎大教授, Newsweek 日本版

(3)「生物多様性から見た新型コロナ・パンデミック:本質を見極める」
足立 直樹、Sustainable Brands News: 2020.05.18

(4) “Assessing nitrogen dioxide (NO2) levels as a contributing factor to coronavirus (COVID-19) fatality”, Yaron Ogen, STOTEN, 2020, https://doi.org/10.1016/j.scitotenv.2020.138605

(5) “Exposure to air pollution and COVID-19 mortality in the United States: A nationwide cross-sectional study”, Xiao Wu et al., 2020

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ABOUT ME
林田 佐智子
Aakashプロジェクト プロジェクトリーダー | 総合地球環境学研究所 教授 | 奈良女子大学 研究院自然科学系 教授